みなさん、こんにちは。
「カムカム・シンセサイザー」のKAMINです。
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 107 MOD Storm」と題して、プリセット・プログラム「107 MOD Storm」のパラメーターを分析します。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このブログでは、その魅力を細かく音と画像で詳しく説明していきます。
音の特徴
ボコーダーのような金属的な音がします。
これはFILTERでBPF 6を使用して、周波数帯域を狭めるように仕上げているからです。
音作りの特徴としてOP4~OP6をキャリア3つの逆Y字接続を使用して、同じモジュレーターOP6からの入力信号をキャリア3つを違ったMODEを使って違った効果を得るようにしています。
キャリアとモジュレーターの関係(逆Y字接続)については以下のページで説明しています。
KORG opsixの機能: FMのキャリアとモジュレーターの関係(9)
- 逆Y字接続(2つのキャリアに対してモジュレーターが1つで並列接続する組み合わせ)
実験
では、音で確認しましょう。
パラメーターの分析は下に書いています。
詳細はそちらをご覧ください。
実験1: 弾いてみる
測定方法
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押します。
音データ
モーション・シーケンスのデータにOP3~OP5のLEVELの変化が設定されています。
実験2: モジュレーション・ホイールを動かす
バーチャル・パッチによりモジュレーション・ホイールを動かすことによってオペレーターのLEVELを変化するように設定されています。
音を確認します。
測定方法
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押します。
モジュレーション・ホイールを0→最大→0にする。
音データ
モーション・シーケンスのデータとバーチャル・パッチで設定したデータがかち合ってしまいました。
キャリアのLEVELを上げているので、音が大きくなっています。
実験3: OP3のMODE: WAVE FOLDERをエディットする
OP3のMODE: WAVE FOLDERのOSC MIXをバーチャル・パッチでピッチ・ホイールによりリアルタイムに変化するように設定します。
設定方法
PROG-PITCHよりPITCH BEND UP/DOWNの値を0にする。
設定されていないV.PATCH10にSOURCEをPITCH WHEEL、DESTINATIONをOP3 MODE: WAVE FOLDERのOSC MIX、INTENSITYを100(最大)に設定します。
測定方法
アルペジエーターのパラメーターをPATTERN: MANUAL、OCT: 2に設定する。
アルペジエーターをLATCH ONにする。
適当なコードを弾きます(D4, G4, C5, F5)。
ピッチ・ホイールを0→最大→0にする。
音データ
OP3の効果がなかったので、OP3のMODE: WAVE FOLDERのOSC MIXを上げて効果を確認しました。
...上げすぎるとキンキンした音になりますね。
パラメーター分析
INITプログラムからの変化を元に分析しています。
INITプログラムのパラメーターの設定については「シンセサイザー KORG opsixの機能: INIT(初期設定)プログラムの分析」をご確認ください。
アルゴリズムには24番のアルゴリズムが設定されています。
OP1, OP2は単独のキャリア。
OP3~OP6はモジュレーターOP6が1つの逆Y字接続です。
OP1では、MODE: FMを使用して、波形がSINE 8BIT、RATIOが1.0000を使用しています。
OP1のFM FEEDBACKの値を鍵盤を弾く強さ(VELOCITY)で変化するようにバーチャル・パッチで設定されています。
OP-L MODでベロシティによるレベルの強弱をコントロールするように設定されています。
またレベルがキー・トラックで基準キーC4として低いキーになるほどプラス、高いキーになるほどマイナスとなるように設定されています。
これによりアタック音の幹となる音にしています。
OP2では、MODE: FMを使用して、波形がSINE、RATIOが4.0000を使用してFM: WIDTHを調整して高音域の幹となる音にしています。
また、OP-L MODでベロシティによるレベルの強弱をコントロール、LFO1によりレベルが周期的変化するように設定されています。
が、LEVELが低いためによく聞こえません。
OP3-OP6では、波形がOP3がSAW、OP6がSAW HD、RATIO比が1:1。
OP3はMODE: WAVE FOLDERを使用して、OSC MIXが0%なのでモジュレーターOP6からの信号をWAVE FOLDERで波形を変形させます。
OP6のLEVELをLFO3で変化するようにバーチャル・パッチで設定されています。
OP4はOP-PITCHでDETUNEによりピッチの小さなずれを設定、TRANSPOSEで+2が設定されています。
OP4はキー・トラックで基準キーをC4として低いキーになるほどレベルがプラスとなるように設定されています。
これによりボコーダーのような音がします。
OP4-OP6では、OP4がMODE: FMを使用しています。波形はOP4がSAW、OP6がSAW HD、RATIO比が7:1。
OP6のLEVELをLFO3で変化するようにバーチャル・パッチで設定されています。
これにより、高音域のノイジーな成分を作っています。
OP5-OP6では、OP5がMODE: FILTER FMを使用して、波形はOP5がADDITIVE SQR3、OP6がSAW HD、RATIO比が1:1。
MODE: FILTER FMでモジュレーターOP6からの入力信号をカットオフ周波数がピッチに同期しながらBPFでフィルタリングしています。
OP5はキー・トラックで基準キーをC4として低いキーになるほどレベルがプラスとなるように設定されています。
OP5はキー・トラックで基準キーをC4として低いキーになるほどレベルがプラスとなるように設定されています。
OP6のLEVELをLFO3で変化するようにバーチャル・パッチで設定されています。
これにより、「ぶぅ~ん」といったアタック部分に共鳴感をもった音を演出しています。
OP6はキー・トラックで基準キーをC3として高いキーになるほどレベルがマイナスとなるように設定されています。
FILTERはBRF6を使用してCUTOFF、RESONANCEが設定されています。
カットオフ周波数がLFO2で変化を与え、その変化をモジュレーション・ホイールでコントロールするように設定されています。
エフェクターは、AUTOPAN(BPM)でうねりの強い音にし、UNISON ENSEMBLEで音に厚みを加え、SHIMMER REVERBでTYPEにRISERを使用してキラキラした残響感を演出しています。
演奏表現の手段として、モジュレーション・ホイールを動かすことでOP1, OP2, OP3, OP4, OP5、プログラム全体のLEVELをコントロールするようにバーチャル・パッチで設定されています。
アフター・タッチでOP2のLEVELをコントロールするようにバーチャル・パッチで設定されています
MODE、WAVE、OP LEVEL、FREQUENCY MODE
OP1, OP2はMODE: FMの単独のキャリアです。
OP2はRATIOを4.0000としてWIDTHの幅を少し狭めています。
OP3~OP5は逆Y字接続のキャリアです。
OP6は逆Y字接続のモジュレーターです。
OP6のパラメーターを変化させるとOP3~OP5のモジュレーションに影響があります。
OP3はMODE: WAVE FOLDERを使用して、独特の波形を作っています。
OP4はMODE: FMを使用して、RATIOが7.0000とピッチが高い音です。
OP5はFILTER FMを使用していますが、OP LEVELが3%と低いため、効果が聴感上わかりません。
OP-EG
ATTACK TIMEはモジュレーターのOP6のみゆっくりで、あとは短め。
OP1, OP2はSUSTAIN LEVELも低く、ATTACK時の音の質感を演出しています。
OP3~OP6はOP3, OP4がSUSTAIN LEVELが高いので持続音での音の質感を担っています。
全オペレーターでCURVEが10となっており、減衰が速く設定されていますので、長めのDECAY TIME、RELEASE TIMEでも短く感じられます。
OP6のSUSTAIN LEVELが20と低いので、音の立ち上がりでの変化はあるものの、持続音ではOP3~OP5へのモジュレーションの時間的変化は少なくなっています。
OP-PITCH、OP-P MOD、OP-L MOD、OP-KEY TRACK
OP-PITCH
OP4にDETUNEが設定されています。
OP4にTRANSPOSEが2semi(2半音)設定されています。
OP-P MOD
OP1, OP2に対してLFO1 INTにより周期的変化が設定されています。
OP2にVELOCITY SENSが1%設定されています。
OP-L MOD
OP1, OP2に対してベロシティの設定がされています。
OP2にLFO1の周期的変化が得られるように設定されています。
OP-KEY TRACK
各位オペレーターにキー・トラックの設定がされています。
FILTER
FILTERはBPF6が設定されています。
LFO2による周期的変化が設定されています。
モジュレーション・ホイールで変化量を変化させるように設定されています。
基準となるキーをC4として、低い方にマイナス、高い方にプラスの効果が得られるようにキー・トラックが設定されています。
MOD(EG、LFO)
EG
INITプログラムから変更はありませんでした。
EGを設定したパラメーターはありませんでした。
LFO
LFO1は、WAVEがTRIANGLE、KEY SYNCがVOICE(キーを押すごとに位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがOFF、SPEEDが6.00Hz、。FADE(フェード・イン:効果が最大になるまでの時間)が1.000sに設定されています。
LFO1はOP-P MODでOP1, OP2のピッチに対して周期的変化するように設定されています。
LFO1はPROGRAM PITCHでピッチへの周期的変化が設定されていて、アフタータッチで変化量を変えるように設定されています。
LFO2は、WAVEがSTEP RND: TIME、KEY SYNCがVOICE(キーを押すごとに位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがON(システム・テンポに同期)、TEMPO SPEEDは1/2。
LFO2はフィルターのカットオフ周波数の周期的変化を得るように設定されています。
LFO2はFILTERのカットオフ周波数に対して周期的変化が設定されています。
モジュレーション・ホイールで変化量を変化させるように設定されています。
LFO3は、WAVEがRANDOM: LEVEL、KEY SYNCがVOICE(キーを押すごとに位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがON、TEMPO SPEEDが3/16。FADE(フェード・イン:効果が最大になるまでの時間)が1.027sに設定されています。
LFO3はバーチャル・パッチでOP6のLEVELを周期的変化するように設定されています。
EFFECT
FX1はAUTO PAN(BPM)、FX2はUNISON ENSEMBLE、FX3はSHIMMER REVERBが設定されています。
VIRTUAL PATCH
バーチャル・パッチの設定は以下の通りです。
- V.PATCH1は、OP6のLEVELをLFO3で変化するように設定されています。
- V.PATCH2は、OP1のFM FEEDBACKの値を鍵盤を弾く強さ(VELOCITY)で変化するように設定されています。
- V.PATCH3は、OP3のLEVELをモジュレーション・ホイールの操作で変化するように設定されています。
- V.PATCH4は、OP4のLEVELをモジュレーション・ホイールの操作で変化するように設定されています。
- V.PATCH5は、OP5のLEVELをモジュレーション・ホイールの操作で変化するように設定されています。
- V.PATCH6は、OP1のLEVELをモジュレーション・ホイールの操作で変化するように設定されています。
- V.PATCH7は、OP2のLEVELをモジュレーション・ホイールの操作で変化するように設定されています。
- V.PATCH8は、プログラム全体のLEVELをモジュレーション・ホイールの操作で変化するように設定されています。
- V.PATCH7は、OP2のLEVELをアフター・タッチで変化するように設定されています。
MISC
LFO1によるピッチへの周期的変化が設定されていて、アフタータッチで変化量を変えるように設定されています。
VOICE
INITプログラムから変更はありませんでした。
まとめ
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 107 MOD Storm」と題して、プリセット・プログラム「107 MOD Storm」のパラメーターを分析しました。
シーケンサーのフレーズでは「MOD STORM」っぽくないですが、手弾きすればボコーダーのような音がします。
プリセットされている音だけ聞いていると早いフレーズが多いので実際の音のニュアンスと違ったりします。
プリセットではOP5のMODE: FILTER FMのLEVELも小さいので試してみたくなります。
OP3~OP6が3つのキャリアの逆Y字接続なので、使いこなすといろんな音が重ねられます。
皆さんもチャレンジしてみてください。
この記事を読んだ方がシンセサイザーに興味を持っていただけたら幸いです。
次回は「KORG opsixのプリセット分析: 109 Shifting 9th」と題して、プリセット・プログラム「109 Shifting 9th」のパラメーターを分析します。
では。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このシンセサイザーでしか味わえない魅力が満載です。
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