みなさん、こんにちは。
「カムカム・シンセサイザー」のKAMINです。
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 122 Franalog」と題して、プリセット・プログラム「122 Franalog」のパラメーターを分析します。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このブログでは、その魅力を細かく音と画像で詳しく説明していきます。
音の特徴
MODE: WAVE FOLDERにより力強さのある分厚い音を作り出しています。
アルゴリズムの構成でY字、逆Y字接続のある20番を使って並列となるキャリア、モジュレーターにPITCH: DETUNEを用いて少しだけピッチをずらすことで厚みを加えています。
MODE: WAVE FOLDERの機能については以下のページから4ページにかけて説明しています。
Y字、逆Y字接続のアルゴリズムの構成については以下のページで説明しています。
KORG opsixの機能: FMのキャリアとモジュレーターの関係(8)
- Y字接続(キャリアに対してモジュレーターが並列接続する組み合わせ)
KORG opsixの機能: FMのキャリアとモジュレーターの関係(9)
- 逆Y字接続(2つのキャリアに対してモジュレーターが1つで並列接続する組み合わせ)
PITCH: DETUNEの機能については以下のページで説明しています。
実験
では、音で確認しましょう。
パラメーターの分析は下に書いています。
詳細はそちらをご覧ください。
実験1: 弾いてみる
測定方法
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押します。
音データ
実験2: モジュレーター OP3のレベルを上げる
モジュレーターであるOP3のLEVELを上げるとキャリアのOP1, OP2への入力信号が増えて、MODE: WAVE FOLDERによる波形の変化が増えます。
OP3のOP-EGにより10秒程度かけてゆっくり立ち上がってゆっくり減衰していきます。
この音の変化を確認します。
測定方法
OP3のLEVELをコードを弾きます(8秒程度)。
OP3のLEVELを40%→100%に上げてコードを弾きます(8秒程度)。
音データ
モジュレーターのLEVELを上げることにより徐々に音の変化を与えることが確認できます。
実験3: OP4のMODE: FILTERのパラメーターを調整する
OP4のMODE: FILTERのパラメーターを変更して音の変化を確認します。
測定方法
OP4のFILTER: CUTOFFを-0.5semi、OP4のFILTER: RESOを40%
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押します。
音データ
レゾナンスを上げて、その調整としてカットオフ周波数を下げました。
低音のベースとフレーズのバランスが良くなったような気がします。
カットオフ周波数がピッチに同期していると鍵盤の位置で音の質感が変わりにくいため、キー・トラックでの調整をしなくてもほとんど大丈夫。
助かります。
パラメーター分析
INITプログラムからの変化を元に分析しています。
INITプログラムのパラメーターの設定については「シンセサイザー KORG opsixの機能: INIT(初期設定)プログラムの分析」をご確認ください。
アルゴリズムには20番のアルゴリズムが設定されています。
OP1~OP3の逆Y字接続とOP4~OP6のY字接続といった構成です。
逆Y字接続のOP1~OP3では、キャリアOP1, OP2はMODE: WAVE FOLDERを使用して、両方のキャリアがモジュレーターOP3と接続されています。
WAVEがSAWで値の違うパラメーターはDETUNE(ピッチの小さなずれ)のみです。
DETUNEで厚みを加えるために2つのキャリアを使っています。
逆Y字接続のOP4~OP6では、キャリアOP4にMODE: FILTERでOSC MIXが0%なので、モジュレーターOP5, OP6からの入力信号をフィルターを介す構成となっています。
OP5, OP6はWAVEにSQUAREが使用されて、値の違うパラメーターはDETUNE(ピッチの小さなずれ)のみです。
こちらはOP: KEY TRACKで基準キーをC3として高いキーほどマイナスに設定していて、低域の補正として音作りがされています。
また、モジュレーターOP5, OP6に対して、MODE: FM: WAVE: WIDTHをLFO3をプラス、マイナスと効果を逆にしてうねりを出しています。
フィルターはLPF POLY6を使用しています。
ベロシティによりカットオフ周波数を変化させたり、キー・トラックで基準キーをC4として低いキーになるほどマイナス、高いキーになるほどプラスになるように設定されています。
演奏表現としてはモジュレーション・ホイールを上げるとLFOによるピッチの周期的変化を出します。
エフェクトは、FX1がUNISON ENSEMBLEで音の厚みを加え、FX2のEARLY REFLECTIONで泡立ち感を出し、FX3のPHASER(BPM)でうねりを加えています。
FX3のPHASER(BPM)はDRY:WET MIXのレベルが0ですが、バーチャル・パッチでEG1の時間的変化を加えています。
MODE、WAVE、OP LEVEL、FREQUENCY MODE
OP1, OP2はMODE: WAVE FOLDERの独特の荒れた音で、パラメーターの値を少しずらして音に厚みを加えています。
同じくOP5, OP6が同じパラメーター設定にして、後述するDETUNEにより音を少しずらして厚みを与えています。
OP-EG
モジュレーターのOP3はATTACK TIME、DECAY/RELEASE TIMEを長く設定して、時間的変化を演出しています。
OP-PITCH、OP-P MOD、OP-L MOD、OP-KEY TRACK
OP-PITCH
OP1, OP2, OP5, OP6に対してDETUNE(ピッチの小さなずれ)が設定されています。
OP-L MOD
OP3以外のオペレーターに対して、鍵盤を弾く強さ(VELOCITY)によるレベルの変化が設定されています。
OP-KEY TRACK
OP4~OP6に対して、鍵盤を弾く強さ(VELOCITY)によるレベルの変化が設定されています。
FILTER
FILTERはLPF POLY6が設定されています。
カットオフ周波数がEG2で時間的変化をするように設定され、鍵盤を弾く強さ(VELOCITY)でコントロールするように設定されています。
カットオフ周波数がキー・トラックで基準キーをC4としてキーが低くなるほどマイナス、キーが高くなるほどプラスになるように設定されています。
MOD(EG、LFO)
EG
EG1はRELEASE TIMEが少し短く設定されています。
EG2はSUSTAIN LEVELを高く設定、RELEASE TIMEを長く設定し、CURVEが10と急峻に減衰するカーブが設定されています。
EG2はFILTERでカットオフ周波数に対して時間的変化をするように設定され、鍵盤を弾く強さ(VELOCITY)でコントロールするように設定されています。
EG3は20.000sと非常にゆっくりな立ち上がりで5.000sとゆっくりなDECAY TIMEの設定がされています。
EG3はバーチャル・パッチでFX3のPHASER(BPM)のDRY:WET MIXを時間的変化するように設定されています。
LFO
LFO1は、WAVEにTRIANGLEが使用され、KEY SYNCがVOICE(キーを押すごとに位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがOFF、SPEEDが6.00Hzに設定されています。
LFO1はバーチャル・パッチでプログラム全体のPITCHをLFO1で周期的変化するように設定されています。
LFO1はPROGRAM PITCHでピッチの周期的変化をアフター・タッチでコントロールするように設定されています。
LFO2は、WAVEにTRIANGLEが使用され、KEY SYNCがVOICE(キーを押すごとに位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがOFF、SPEEDが2.00Hzに設定されています。
LFO3は、WAVEにTRIANGLEが使用され、KEY SYNCがVOICE(キーを押すごとに位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがOFF、SPEEDが0.57Hzに設定されています。
LFO3はバーチャル・パッチでOP5, OP6のMODE: FM: WIDTHを周期的変化するように設定されています。
EFFECT
FX1はUNISON ENSEMBLE、FX2はEARLY REFLECTION、FX3はPHASER(BPM)が設定されています。
VIRTUAL PATCH
バーチャル・パッチの設定は以下の通りです。
- V.PATCH1は、プログラム全体のPITCHをLFO1で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH2は、プログラム全体のATTACK TIMEを鍵盤を弾く強さ(VELOCITY)で変化するように設定されています。
- V.PATCH3は、OP5のMODE: FM: WIDTHをLFO3で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH4は、OP6のMODE: FM: WIDTHをLFO3で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH5は、FX3のPHASER(BPM)のDRY:WET MIXをEG3で時間的変化するように設定されています。
MISC
OCTAVEが-1oct(1オクターブ下)に設定されています。
LFO1によるピッチの周期的変化をアフター・タッチでコントロールするように設定されています。
VOICE
INITプログラムから変更はありませんでした。
まとめ
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 122 Franalog」と題して、プリセット・プログラム「122 Franalog」のパラメーターを分析しました。
MODE: FILTERではカットオフ周波数をピッチに同期しています。
これは従来のFILTERの動作とは違います。
このメリットはキーの位置で音の質感があまり変わらないこと。
従来のシンセサイザーでは、FILTERのカットオフ周波数が固定ですので、キーの位置を変えると基音の周波数とカットオフ周波数との差が変化してしまうため、あるキーの位置ではしっくりできても別のキーの位置ではしょぼくなったりうるさくなったりしてしまいます。
これを補いためにキー・トラック(KEY TRACK)のパラメーターがあるのですが、この調整が非常に面倒です。
だからと言って「ピッチに同期するほうがベスト」とはならないところが面白いところで、別途FILTERを持っていて両方の使い方ができるopsixは他にはない魅力です。
また、フレーズを弾いていると感じられませんが、持続音を弾いているとLFO3によるゆっくりとした音の周期的変化も設定されています。
データを確認することで新たな発見ができますよ。
皆さんもデータを確認しながらいろいろと試してみてください。
この記事を読んだ方がシンセサイザーに興味を持っていただけたら幸いです。
次回は「KORG opsixのプリセット分析: 127 Inspirational Story」と題して、プリセット・プログラム「127 Inspirational Story」のパラメーターを分析します。
では。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このシンセサイザーでしか味わえない魅力が満載です。
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