みなさん、こんにちは。
「カムカム・シンセサイザー」のKAMINです。
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 270 ARP Flurry」と題して、キャリアにMODE: FILTERを使ったプリセット・プログラム「270 ARP Flurry」のパラメーターを分析します。
プリセットの音を聞いてみると「一発用だな」と思うのですが、ARP機能を外せばライブで使えるストリングスになりますよ。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このブログでは、その魅力を細かく音と画像で詳しく説明していきます。
音の特徴
モーション・シーケンスを聴くとスピード感のある音ですが、手弾きをすると素直なストリングス。
アルペジオ機能を外して自分用のストリングスの音作りにチャレンジできますよ。
以下の「実験」の中で幾つかのパラメーターを操作してみました。
ご興味ありましたら音データを聴いてください。
実験
では、音で確認しましょう。
パラメーターの分析は下に書いています。
詳細はそちらをご覧ください。
実験1: 弾いてみる
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押します。
音データ
もう使われているっぽい音(笑)
FM音源のくっきりした音です。
実験2: モジュレーション・ホイールの効果
アルペジエーターをONにしてA3を弾きながらモジュレーション・ホイールを0→最大→0に動かす。
音データ
キャリアのリリース・タイムとリバーブのLEVELが上がるのがわかります。
実験3: OP3のRATIOを変化させる
OP3のRATIOを変化させて、カットオフ周波数を変化させてみます。
音の質感に変化があまりないことを感じてください。
通常のフィルターだとKEY TRACKを設定する必要がありますが、ピッチに同期していることでKEY TRACKの設定がほとんど不要になりますね。
測定方法
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押した後、OP3のRATIOをRATIOノブで0.1250→0.0078→32.0000→0.1250と変化させます。
音データ
RATIOを上げるとざらざら感がでて気持ち良いでしょ。
実験4: OP1のLEVELを変化させる
多分「カタッ」といったアタック・ノイズを追加することを想定しているんだと思います。
測定方法
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押した後、OP1のLEVELを0→100%と変化させます。
音データ
100%だとやり過ぎですが、ちょうどよい塩梅を見つけて追加する、
少しエディットして自分なりの音に仕上げていくことができますね。
実験5: OP5のLEVELを変化させる
OP5の長めのリリース・タイムを設定した音を追加していきます。
測定方法
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押した後、OP5のLEVELを0→100%と変化させます。
音データ
同じ波形、RATIOですが、表情が違ってきます。
実験6: OP6のLEVELを変化させる
OP6のSINE波形をMODE: FMのWIDTH、FBパラメーターでエディットした音を追加します。
測定方法
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押した後、OP6のLEVELを0→100%と変化させます。
音データ
オルガンの上のドローバーを上げたような感じ。
いいですよね。
実験7: ARPをOFFにした音
最後に、ARPをOFFにした音を聞いてください。
測定方法
適当に弾きます。
音データ
音は素直な良い音。
FM音源とは思えないでしょ。
演奏のお披露目は...キーボードの演奏は初めてなんじゃないかな。
レガートできない...
エフェクトが効いていてよかった(笑)
パラメーター分析
INITプログラムからの変化を元に分析しています。
INITプログラムのパラメーターの設定については「シンセサイザー KORG opsixの機能: INIT(初期設定)プログラムの分析」をご確認ください。
opsixの音を聞いて、「ライブで使えるストリングスがないなぁ」と感じていました。
立ち上がりが遅いんです。
でもアタック・タイムを変更したりとパラメーターを操作すると挫折してくる(笑)
もっと良い感じでエディットできないかなぁを調べてみたところ、このプログラムをエディットすればよいことに気づきました。
そしてopsixならではのパラメーター操作をすることで自分のオリジナルの音に近づけることがしやすいです。
では、分析していきましょう。
アルゴリズム13を使っています。
オペレーターはキャリアであるOP3にMODE: FILTERを設定してモジュレーターにOP4のみレベルが上がっている状態です。
元の音はモジュレーターのOP4の音です。
キャリアのOSC MIXが0%になっているのは、MODE: FILTERのカットオフ周波数をOP3のRATIOとTRANSPOSEで設定しています。
DETUNEもカットオフ周波数を微妙に揺らしているようでほとんど効果なし。
エフェクトのUNISON ENSEMBLEに影響するかなぁ...微妙。
カットオフ周波数のポイントをずらすにはRATIOとTRANSPOSEパラメーターです。
微妙にずらしたいのならPITCHのFINEパラメーターですかね。
このMODE: FILTERの良いところはCUTOFFがピッチに同期していること。
アナログ・シンセサイザーのフィルターは周波数ポイントが決まっているので、1オクターブ違うと音の印象が変わってしまうことが良くあります。
これが解消できる、、、というか違った音作りができるのが、MODE: FILTERです。
オペレーターを2つしか使っていないので、
- キャリアOP3のMODE: FILTERの効果を使って音を増やしたいならOP5、OP6を使う
- その他のMODEで音作りをして効果を増やしたいのならOP1とOP2を使う
と、エディットしがいのあるプログラムです。
設定値で利用されているのが以下の2つのオペレーターです。
MODE、WAVE、OP LEVEL、FREQUENCY MODE
いろいろ設定されていますが、、、影響のあるのはOP3のFILTERぐらいです。
OP3のRATIOは出力されていませんので、実際の音の元はOP4のSAW HDです。
ただ、MODE: FILTERの場合、カットオフ周波数はオシレーターのピッチに同期しているので、OP3のRATIOを調整することで、カットオフ周波数を変化させることができます。
そして、このオシレーターのピッチに同期しているので、通常のフィルターとは違ってキーの高さによって音の質感が変わらない。
これがopsixのMODE: FILTERの魅力です。
OP-EG
実際にOP LEVELが上がっているのはOP3とOP4です。
OP3、OP4ともにサスティン・レベルを上げて、アタックから持続音の変化を少なくしています。
OP-PITCH、OP-P MOD、OP-L MOD、OP-KEY TRACK
OP-PITCH
OP3にてDETUNEが設定されています。
FILTER
FILTERはENABLEがOFFですので、効果なしです。
MOD(EG、LFO)
INITプログラムから変化がありますが、EG、LFOが影響を与える設定がされていません。
EG、LFO
EG、LFO
EFFECT
エフェクトはこのプログラムの音に深く影響を与えていて、OFFにすると全然イメージが違います。
これは基本的な部分をシンセの機能を使って、音の厚みやエコー感、リバーブによる広がりはエフェクトに任せている。
だから自分なりにエディットしやすいです。
- FX1のUNISON ENSEMBLEはVOICESが6で、このプログラムの音の厚みを引き受けています。
- FX2のDELAY(BPM)は、長めのディレイ・タイムを設定しています。
- FX3のREVERBはTYPEがPLATEでシャキッとした残響効果を演出しています。
VIRTUAL PATCH
バーチャル・パッチの設定は以下の通りです。
- V.PATCH1は、FX3のREVERBのPARAMETER1であるLEVELをモジュレーション・ホイールを動かすことで値を変化するように設定されています。
- V.PATCH11は、OP3のEG: RELEASE TIMEにモジュレーション・ホイールを動かすことで値を変化するように設定されています。
- V.PATCH12は、OP3のATTACK TIMEをアフター・タッチでコントロールするように設定されています。
MISC
MISCページ・グループのパラメーターでは、INITプログラムから以下の項目が変更されています。
- 1オクターブ下に設定されています。
- ピッチ・ホイールのBEND UPを12 semi、BEND DOWNを-12 semiと1オクターブの範囲に設定されています。
VOICE
INITプログラムから変更はありませんでした。
まとめ
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 270 ARP Flurry」と題して、キャリアにMODE: FILTERを使ったプリセット・プログラム「270 ARP Flurry」のパラメーターを分析しました。
キャリアのOP3のMODE:FILTERを設定することで周波数帯域でフィルタリングするアナログ・シンセサイザーのような不安は解消できます。
あとは演奏してみて楽曲で使うキーの範囲を絞って音作りをしてみてください。
エフェクターをオフにすると印象が違う。
オペレーターを2つしか使っていないんです。
使っているオペレーターは2つですから、レベルが0%のオペレーターを上げるとか、波形を変えるとか、違うMODEを使ってみるとか、エフェクトを変えてみるとか、ベロシティ設定するとか...
バーチャル・パッチでOP3のパラメーターに変化を与えるとか...
自分なりに音作りをすることができます。
「ライブで使うにはアタック・タイムが遅いかなぁ」って思えば、HOME/ALGOページにATKパラメーターがノブに割り当てられていますから、プログラムを変更したときにはこのページが表示されていますので、その場で操作できるし。
でも隣のノブがアルゴリズム...どうにかならないかなぁ、KORGさん。
現時点ではライブ・パフォーマンス・モードを作ってアルゴリズムだけ変更できないようにソフトで変更してくれるだけでもありがたいと思います。
opsixでエディットするにはこのプログラムから音作りをはじめてもよいのでは?と思っています。
このプログラムでアルペジエーターをOFFにしたテンプレートとか、実践的なテンプレート・プログラムを増やしてほしいですね。
解説入りで(笑)
MODE: FILTERのカットオフ周波数をどのように決めるのか、取扱説明書には書いていなくて、普通CUTOFFパラメーターを操作します。
実験3: のように、RATIOでも効果があるなんて、、、ねぇ。
この発見は非常にワクワクしましたよ(笑)
お願いします、KORGさんっ!
このプログラムを作った人は、、、取扱説明書を見ると「Luke Edwards」さん。
感謝です。
この記事を読んだ方がシンセサイザーに興味を持っていただけたら幸いです。
次回は「KORG opsixのプリセット分析: 011 FM Vamp」と題して、キャリアのFREQUENCY MODEにFIXEDを使用したプリセット・プログラム「011 FM Vamp」のパラメーターを分析します。
では。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このシンセサイザーでしか味わえない魅力が満載です。
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