みなさん、こんにちは。
「カムカム・シンセサイザー」のKAMINです。
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 099 Pluck Drip」と題して、プリセット・プログラム「099 Pluck Drip」のパラメーターを分析します。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このブログでは、その魅力を細かく音と画像で詳しく説明していきます。
音の特徴
何と表現したら良いのか...(笑)
キーを一つ押していても複雑な変化をしています。
オペレーターをすべて直列接続させた構成です。
今回は6段直列接続のオペレーターが出音にどんな効果をもたらしているのか確認します。
オペレーターとアルゴリズムについては以下のページで説明しています。
実験
では、音で確認しましょう。
パラメーターの分析は下に書いています。
詳細はそちらをご覧ください。
実験1: 弾いてみる
測定方法
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押します。
音データ
実験2: 各オペレーターの機能を確認する(OP6)
これだけのMODEを使って直列接続していると、何が効いているのかわかりにくい。
なので、オペレーターごとに確認します。
まず、再後段のOP6から確認します。
設定方法
音の変化がわかりにくくなる機能はオフにします。
FX2: COMPRESSORをON→OFFに変更
FX3: REVERBをON→OFFに変更
VOICE: UNISON VOICESを2→0に変更
OP1~OP5をBYPASSに変更
OP6のLEVELを15%→100%に変更
測定方法
キーE4を弾きます。
音データ
サイン波を出しています。
実験3: 各オペレーターの機能を確認する(OP5)
OP5を確認します。
設定方法
音の変化がわかりにくくなる機能はオフにします。
FX2: COMPRESSORをON→OFFに変更
FX3: REVERBをON→OFFに変更
VOICE: UNISON VOICESを2→0に変更
OP1~OP4をBYPASSに変更
測定方法
1回目: OP6をMUTEに変更して、キーE4を弾きます。
2回目: OP6はMODE: FMのまま、キーE4を弾きます。
音データ
1回目
「ぶつっ」といった音が徐々にサイクルを早めます。
1.20Hzの周期の音がバーチャル・パッチで少しずつ周期を早めるためです。
2回目
OP6の信号をOP5のFIXEDの周期で鳴らしています。
実験4: 各オペレーターの機能を確認する(OP4)
OP4を確認します。
設定方法
音の変化がわかりにくくなる機能はオフにします。
FX2: COMPRESSORをON→OFFに変更
FX3: REVERBをON→OFFに変更
VOICE: UNISON VOICESを2→0に変更
OP1~OP3をBYPASSに変更
測定方法
1回目: OP5~OP6をMUTE、音を出すためにOP4 OSC MIXを0%→30%に変更して、キーE4を弾きます。
2回目: OP5~OP6はMODE: FMのまま、キーE4を弾きます。(OP4 OSC MIXは0%)
音データ
1回目
OP4のMODE: EFFECT: PHASERをオシレーターのFIXED: 140.00Hzにかけています。
2回目
OP5, OP6で作られた信号に対して、OP4のMODE: EFFECT: PHASERをかけています。
実験5: 各オペレーターの機能を確認する(OP3)
OP3を確認します。
設定方法
音の変化がわかりにくくなる機能はオフにします。
FX2: COMPRESSORをON→OFFに変更
FX3: REVERBをON→OFFに変更
VOICE: UNISON VOICESを2→0に変更
OP1~OP2をBYPASSに変更
測定方法
1回目: OP4~OP6をMUTE、OP3 OSC MIXを0%→70%に変更して、キーE4を弾きます。
2回目: OP4~OP6はMODEをそのままにして、キーE4を弾きます(OP3 OSC MIXは0%)。
音データ
1回目
OP3のオシレーターのRATIO: 1.0000にMODE: EFFECT: SHORT DELAYをかけています。
2回目
OP4~OP6で作られた信号に対して、OP3のMODE: EFFECT: SHORT DELAYをかけています。
実験6: 各オペレーターの機能を確認する(OP2)
OP2を確認します。
設定方法
音の変化がわかりにくくなる機能はオフにします。
FX2: COMPRESSORをON→OFFに変更
FX3: REVERBをON→OFFに変更
VOICE: UNISON VOICESを2→0に変更
OP1をBYPASSに変更
測定方法
1回目: OP3~OP6をMUTE、OP2 OSC MIXを0%→70%に変更して、キーE4を弾きます。
2回目: OP3~OP6はMODEをそのままにして、キーE4を弾きます(OP2 OSC MIXは0%)。
音データ
1回目
OP2のオシレーターのFIXED: 250.00HzにMODE: FILTERをかけています。
2回目
OP3~OP6で作られた信号に対して、OP2のMODE: FILTERをかけています。
実験7: 各オペレーターの機能を確認する(OP1)
最後にOP1を確認します。
設定方法
音の変化がわかりにくくなる機能はオフにします。
FX2: COMPRESSORをON→OFFに変更
FX3: REVERBをON→OFFに変更
VOICE: UNISON VOICESを2→0に変更
測定方法
1回目: OP2~OP6をMUTE、OP1 OSC MIXを0%→60%に変更して、キーE4を弾きます。
2回目: すべてのオペレーターのMODEをそのままにして、キーE4を弾きます。
3回目: 2回目から、VOICE: UNISON VOICESを2に戻して、キーE4を弾きます。
4回目: 3回目から、FX2: COMPRESSORをONに戻して、キーE4を弾きます。
5回目: 4回目から、FX3: REVERBをONに戻して、キーE4を弾きます。
音データ
1回目
OP1のオシレーターのRATIO: 1.0000にMODE: EFFECT: COMBをかけています。
2回目
OP2~OP6で作られた信号に対して、OP2のMODE: FILTERをかけています。
3回目
2回目の設定からVOICE: UNISON VOICESを2に戻しました。
4回目
3回目の設定からFX2: COMPRESSORをONに戻しました。
5回目
4回目から、FX3: REVERBをONに戻して、設定をすべて戻したので、プログラムの音です。
パラメーター分析
INITプログラムからの変化を元に分析しています。
INITプログラムのパラメーターの設定については「シンセサイザー KORG opsixの機能: INIT(初期設定)プログラムの分析」をご確認ください。
OP1からOP6の直列接続といった構成です。
アルゴリズムには34番のアルゴリズムが設定されています。
OP1, OP3, OP4でMODE: EFFECT、OP2でMODE: FILTERが使用されていますが、各オペレーターのオシレーターはOSC MIXが0。
なので、OP5, OP6で作成された信号に対して各モードで音に変化を加えていきます。
OP5のFIXED 1.2Hzで揺れを生じたOP6の波形が元になります。
OP6はALGORITHM FEEDBACKの対象のオペレーターで80%に設定されています。
なので、SAWに近い波形です。
そして謎だったのは、音の揺れの周期が速くなったりすること。
OP5は1.20Hzなので、固定周波数で揺れるはずですが、周期が変わっていく。
詳しいことはわかりませんが、OP5のOP-PITCHのEG1の設定が要因のようです。
これはOP5のPITCHをEG1の時間的変化を加える設定です。
OP5のCOARSE RATIOはLFO2で周期的変化するようにバーチャル・パッチで設定されています。
OP5のEFFECT: PHASER: FREQUENCYはLFO2で周期的変化するようにバーチャル・パッチで設定されています。
OP5-OP6で作成した波形は、OP4のMODE: EFFECT: PHASERの入力信号として扱われます。
ここでFIXEDで設定しているのは、周波数をピッチと連動させないためです。
これによって雑味のある音になりました。
この信号がOP3のMODE: EFFECT: SHORT DELAYの入力信号として扱われます。
これによって、DELAY音が加わりました。
OP3のEFFECT: SHORT DELAY: S.DELAY TIMEはLFO3で周期的変化するようにバーチャル・パッチで設定されています。
この信号をOP2のMODE: FILTERでMG HPF12で低音域をカットして、RESONANCEをかけています。
この信号をOP1のMODE: EFFECT: COMB FILTERの入力信号として扱われます。
COMB FILTER独特の「ビィーン」といった音になりました。
キャリアであるOP1にはOP-L MODでレベル・ベロシティがかけられています。
また、オペレーターによってキー・トラックで信号のキーの位置によるレベルの変化が設定されています。
FILTERはLPF12が設定されていますが、INITプログラムのままで効果はありません。
エフェクターは、COMPRESSORで音をすっきりさせた感じがします。その後、REVERBでTYPEをCHAMBERを使用して高い天井にいるような残響感を演出しています。
UNISON VOICESを2に設定して、音に厚みを加えています。
演奏表現の手段として、モジュレーション・ホイールを動かすことでOP5のPITCHを変化するようにバーチャル・パッチで設定されています。
また、アフター・タッチでOP1のEFFECT: COMB: FREQUENCY、OP6のLEVELをコントロールするようにバーチャル・パッチで設定されています
MODE、WAVE、OP LEVEL、FREQUENCY MODE
MODE: EFFECTを設定しているOP1、OP3、OP4と、MODE: FILTERを設定しているOP2はOSC MIXが0%なので、自身のオシレーターは出力しないで後段のオペレーターからの入力信号にエフェクトをかける設定です。
ですので、OP5をキャリア、OP6をモジュレーターとして、キャリアがFIXED、モジュレーターがRATIOでOP6の波形をOP5のFIXEDの周波数で揺らす波形が元になっています。
OP5, OP6の波形をOP4でPHASERにかけて、OP3でSHORT DELAYにかけて、OP2でFILTERにかけて、OP1でCOMB FILTERにかけていることになります。
OP1のMODE: EFFECT: COMBはFREQUENCY MODEがRATIOなので、効果がかかる周波数はピッチに連動します。
OP4のMODE: EFFECT: PHASERのFREQUENCYはFREQUENCY MODEをFIXEDにすることでオシレーターのピッチと連動せずに一定の周波数としています。
OP-EG
キャリアであるOP1はATTACK TIMEが少し時間がかかり、DECAY TIME、RELEASE TIMEが長い設定になっています。
OP2~OP5はSUSTAIN LEVELが100と減衰しない設定で、RELEASE TIMEがキャリアよりゆっくり減衰するように設定されています。
最後段のOP6のアタックがゆっくり立ち上がり、RELEASE TIMEもゆっくりに設定されています。
OP-PITCH、OP-P MOD、OP-L MOD、OP-KEY TRACK
OP-P MOD
OP5のピッチに対して、EG1により時間的変化するように設定されています。
OP-L MOD
キャリアであるOP1に対して鍵盤を弾く強さ(VELOCITY)による効果が設定されています。
OP-KEY TRACK
OP1~OP3は、基準キーC4に対して、低いキーになるほどプラスのレベルになる設定がされています。
OP5, OP6は、基準キーC1に対して、高いキーになるほどマイナスのレベルになる設定がされています。
FILTER
FILTERページのパラメーターはINITプログラムと同じ設定値でした。
FILTERはENABLE: ONですが、CUTOFF周波数が最大値であるため、フィルターの影響はないと考えます。
MOD(EG、LFO)
EG
EG1はDECAY TIME、RELEASE TIMEが短く設定されています。
EG1はOP-P MODでOP5のピッチに対して時間的変化するように設定されています。
LFO
LFO1は、INITプログラムの設定から変更はありません。
LFO1はPROGRAM PITCHでピッチの周期的変化をモジュレーション・ホイールでコントロールするように設定されています。
LFO2は、WAVEがTRIANGLE、KEY SYNCがVOICE(キーを押すごとに位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがOFF、SPEEDが0.08Hz、PHASE(位相)が-90deg(-90度のところから始まる)に設定されています。
LFO2はバーチャル・パッチでOP5のCOARSE RATIO、OP5のEFFECT: PHASER: FREQUENCYをを周期的変化するように設定されています。
LFO3は、WAVEにRANDOM: LEVELが使用され、KEY SYNCがVOICE(キーを押すごとに位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがOFF、SPEEDが1.00Hzに設定されています。
LFO3はバーチャル・パッチでOP3のEFFECT: SHORT DELAY: S.DELAY TIMEを周期的変化するように設定されています。
EFFECT
FX1はOFF、FX2はCOMPRESSOR、FX3はREVERBが設定されています。
VIRTUAL PATCH
バーチャル・パッチの設定は以下の通りです。
- V.PATCH1は、OP3のEFFECT: SHORT DELAY: S.DELAY TIMEをLFO3で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH2は、OP5のCOARSE RATIOをLFO2で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH3は、OP1のEFFECT: COMB: FREQUENCYをアフタータッチでコントロールするように設定されています。
- V.PATCH4は、OP5のPITCHをモジュレーション・ホイールで変化するように設定されています。
- V.PATCH5は、OP5のEFFECT: PHASER: FREQUENCYをLFO2で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH6は、OP6のLEVELをアフタータッチでコントロールするように設定されています。
MISC
ピッチ・ベンドの値を±12semi(±1オクターブ)にしています。
LFO1によるピッチの周期的変化をモジュレーション・ホイールでコントロールするように設定されています。
ALGORITHM FB(FEEDBACK)が80%に設定されています。
対象のオペレーターは、OP5-OP6になります。
VOICE
UNISON VOICESが2、UNISON DETUNEが20cents、UNISON SPREADが70%に設定されています。
まとめ
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 099 Pluck Drip」と題して、プリセット・プログラム「099 Pluck Drip」のパラメーターを分析しました。
すべてのオペレーターが直列接続だったので、実験ではオペレーターの機能を1つずつ確認しました。
OP5のFIXED: 1.20Hzが音の出し方の特徴で、OP6のピッチに対して低周期で音を揺らし、各オペレーターの機能で脚色する、、、といった流れでしたね。
プログラムのデータ分析をすると、テクニックも自分のものにできます。
皆さんもチャレンジしてみてください。
この記事を読んだ方がシンセサイザーに興味を持っていただけたら幸いです。
次回は「KORG opsixのプリセット分析: 147 Wasps」と題して、プリセット・プログラム「147 Wasps」のパラメーターを分析します。
では。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このシンセサイザーでしか味わえない魅力が満載です。
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