みなさん、こんにちは。
「カムカム・シンセサイザー」のKAMINです。
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 302 Hardgroove」と題して、プリセット・プログラム「302 Hardgroove」のパラメーターを分析します。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このブログでは、その魅力を細かく音と画像で詳しく説明していきます。
音の特徴
シーケンサーで鳴らすとサウンド・セットのように数種類の音が出てくる。
調べてみると、キーを1つ押すだけでリズムとメロディが勝手に鳴りだすプログラムです。
しかも音がどんどん変化していきます。
これはLFOをKEY SYNCをONにして同期させて、その周期でオペレーターのレベルやピッチに変化するようにV.PATCH(VIRTUAL PATCH)で設定して実現させています。
LFOの機能については以下のページで説明しています。
KEY SYNCについてはこちら
V.PATCHの機能については以下のページで説明しています。
実験
では、音で確認しましょう。
パラメーターの分析は下に書いています。
詳細はそちらをご覧ください。
実験1: 弾いてみる
測定方法
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押します。
音データ
一つのプログラムとは思えないリズムとメロディを奏でています。
実験2: モジュレーション・ホイールを動かす
バーチャル・パッチでモジュレーション・ホイールを動かすことによって複雑な音の変化が得られるように設定されています。
これを試してみます。
測定方法
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押します。
モジュレーション・ホイールを0→最大→0にする。
音データ
モジュレーション・ホイール最大で古いTVゲームのような音になりますね。
実験3: OP2を使ってキックの音を変化させる
OP2のLEVELが0%なので、波形をSINE→NOISE S/Hに変更してキックの音に変化を与えます。
測定方法
OP2のMODE: FM: WAVEをSINE→NOISE S/Hに変更
OP2のLEVELを50%に変更
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押します。
モジュレーション・ホイールを0→最大→0にする。
音データ
このキックの荒れた感じ。モジュレーション・ホイールでリアルタイムで操作する変化では使えますよね。
実験4: 実験3の設定でピッチ・ホイールを動かしてみる
ピッチ・ホイールが上下5オクターブの幅に設定されていますので、実験3の設定でピッチ・ホイールを上下させてみます。
測定方法
OP2のMODE: FM: WAVEをSINE→NOISE S/Hに変更
OP2のLEVELを50%に変更
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押します。
ピッチ・ホイールを適当に動かす。
音データ
もう、オモチャでしょ。
録音していて楽しくてしょうがなかった(笑)
パラメーター分析
INITプログラムからの変化を元に分析しています。
INITプログラムのパラメーターの設定については「シンセサイザー KORG opsixの機能: INIT(初期設定)プログラムの分析」をご確認ください。
アルゴリズムには06番のアルゴリズムが設定されています。
3つのキャリア-モジュレーターの直列接続といった構成です。
キーを1つ押すだけでリズムとメロディが勝手に鳴りだすプログラムです。
しかも音がどんどん変化していく。
さっそく分析してみましょう。
OP1, OP2の直列接続はキックの音を作っています。
OP2のLEVELが0で、この値を上げるとFM変調により心臓のような音が加わってきます。
バーチャル・パッチでOP1のLEVELとPITCHをLFO1で周期的変化するように設定されています。
LFO1は波形にEXP. SAWが使われていて、TEMPO SYNCによりテンポに合わせて音を鳴らします。
OP3, OP4の直列接続は、このプログラムの要、様々な音の変化をしながらいろんな音が飛び出すように設定されています。
この仕組みはバーチャルパッチでパラメーターを操作するように設定しています。
OP3のLEVELをLFO2とLFO3で周期的に変化するように設定されています。
OP3のCOARSE RATIOをLFO2で周期的変化するように設定されています。
LFO2は波形にSAMPLE&HOLDが使われていて、TEMPO SYNCによりテンポに合わせてランダムにピッチが変化します。
OP4のPITCHをLFO2で周期的変化するように設定されています。
LFO2は波形にSAMPLE&HOLDが使われていて、TEMPO SYNCによりテンポに合わせてランダムなピッチで音が鳴ることを実現しています。
OP5, OP6の直列接続は、ハイハットの刻みの音を作っています。
OP5のOSC MIXは0%なのでOP6の波形のNOISE WHITEの音をOP5でフィルターをかけています。
MODE: FILTERのTYPEとしてMS-20 HPFを使い、CUTOFFを+63.5semi、RESOを39%としてハイハットの金属的な音とスティックでハイハットを叩く音にしています。
OP6のMODE: RING MOD.が設定されていますが、後段のオペレーターがないので、RATIOが6.0000のNOISE WHITEの音をOP5に出力しています。
バーチャル・パッチでは、OP5のLEVELをLFO2、LFO3で周期的に変化するように設定されています。
フィルターはLFP MS-20を使って、音に抑圧感を出して、キックとハットが前に出るような印象です。
フィルターをオフにするとリズム側の音のレベルが低くなり、単調に感じられます。
演奏手段では、
OP1のMODE: FM: WIDTHをモジュレーション・ホイールで変化するように設定されていて、上げるとキックの音が「ミョンミョン」といった音に変化します。
OP4のLEVELをモジュレーション・ホイールで変化するように設定されていて、上げるとLEVELがマイナスになるため、音数が少なくなります。
OP3のLEVELをアフター・タッチで変化するように設定されています。
エフェクトは、AUTOPAN DELAYで遠近感を出して、SHIMMER REVERBですっきりしたキラキラ感のある奥行きが演出されています。
MODE、WAVE、OP LEVEL、FREQUENCY MODE
OP1でドラムのキックを演出。OP2はLEVELが0で効果はありません。
OP3-OP4でランダムなピッチの音を担っています。
OP5-OP6でノイジーなハットを演出しています。
弾くキーにより強調する拍が変化します。
OP6にMODE: RING MOD.を設定していますが、後段のオペレーターがないためにリング・モジュレーターとしての効果はありません。
OP-EG
OP-PITCH、OP-P MOD、OP-L MOD、OP-KEY TRACK
OP-P MOD
OP1はLFO1でピッチが時間的変化するように設定されています。
FILTER
FILTERはLPF MS-20が設定されています。
基準キーをC4として、高いキーを弾くほどカットオフ周波数をプラスにするよう設定されています。
MOD(EG、LFO)
EG
EG3はDECAY TIMEが非常に短く設定されています。
EGを設定したパラメーターはありませんでした。
LFO
LFO1は、WAVEにEXP. SAW DOWNが設定されて、KEY SYNCがVOICE(キーを押すごとに位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがON(システム・テンポに同期)、TEMPO SPEEDが1/4が設定されています。
LFO1はバーチャル・パッチでOP1のLEVEL、PITCHを周期的変化するように設定されています。
LFO2は、WAVEにSAMPLE&HOLDが設定されて、KEY SYNCがVOICE(キーを押すごとに位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがON(システム・テンポに同期)、TEMPO SPEEDが1/16が設定されています。
LFO2はバーチャル・パッチでOP5のLEVEL、OP3のCOARSE RATIO、OP4のPITCH、OP3のLEVELを周期的変化するように設定されています。
LFO3は、WAVEにEXP. SAW DOWNが設定されて、KEY SYNCがVOICE(キーを押すごとに位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがON(システム・テンポに同期)、TEMPO SPEEDが1/16が設定されています。
LFO3はバーチャル・パッチでOP3, OP5のLEVELを周期的変化するように設定されています。
EFFECT
FX1はDISTORTION、FX2はAUTOPAN DLY(BPM)、FX3はSHIMMER REVERBが設定されています。
VIRTUAL PATCH
バーチャル・パッチの設定は以下の通りです。
- V.PATCH1は、OP1のLEVELをLFO1で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH2は、OP1のPITCHをLFO1で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH3は、OP5のLEVELをLFO2で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH4は、OP3のCOARSE RATIOをLFO2で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH5は、OP5のLEVELをLFO3で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH6は、OP4のPITCHをLFO2で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH7は、OP3のLEVELをLFO3で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH8は、OP3のLEVELをLFO2で周期的変化するように設定されています。
- V.PATCH9は、OP3のLEVELをアフター・タッチで変化するように設定されています。
- V.PATCH10は、OP1のMODE: FM: WIDTHをモジュレーション・ホイールで変化するように設定されています。
- V.PATCH11は、FX3のSHIMMER REVERBのREVERB LEVELをモジュレーション・ホイールで変化するように設定されています。
- V.PATCH12は、OP4のLEVELをモジュレーション・ホイールで変化するように設定されています。
MISC
ピッチ・ベンドの値を±60semi(上下5オクターブ)に設定されています。
VOICE
VOICE ASSIGNにMONO LEGATO(単音で発音。音を切らさないように弾いた時、途切れないようにする)
GLIDE MODEでLEGATO(音を切らさないように弾いた時、ピッチを滑らかに移行する)
GLIDE TIMEに0.065sです。
まとめ
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 302 Hardgroove」と題して、プリセット・プログラム「302 Hardgroove」のパラメーターを分析しました。
LFOのWAVEにEXP. SAW DOWNが設定されて、オペレーターのLEVELに設定してリズム音を作り出しています。
LFOのWAVEにSAMPLE&HOLDが設定されて、オペレーターのピッチに関わるパラメーターに設定すればランダムに音が変化しますので、リズム音の変化やメロディアスな音の変化に使われています。
他にも演奏方法やコントローラーによって音が変化するようにパラメーターが設定されています。
他のプログラムにも参考になるテクニック満載のプログラムでした。
この記事を読んだ方がシンセサイザーに興味を持っていただけたら幸いです。
次回は「KORG opsixのプリセット分析: 205 Glass Waves」と題して、プリセット・プログラム「205 Glass Waves」のパラメーターを分析します。
では。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このシンセサイザーでしか味わえない魅力が満載です。
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