みなさん、こんにちは。
「カムカム・シンセサイザー」のKAMINです。
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 035 Comb Dulcimer」と題して、2つの同じオペレーター構成(Y字接続)を使用したプリセット・プログラム「035 Comb Dulcimer」のパラメーターを分析します。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このブログでは、その魅力を細かく音と画像で詳しく説明していきます。
音の特徴
弦の音を強調したピアノの音です。
周りに障害物があるところにマイクを置いたような残響感です。
2つの同じオペレーター構成(Y字接続)を使用しています。
モジュレーター側はFIXED(固定周波数)を設定し、キャリアのMODE: EFFECT: COMB FILTERでピッチに連動して音程が発生するといった、マニアックな音作りがされています。
アルゴリズムのY字接続での音作りについては以下のページで説明しています。
ご覧ください。
KORG opsixの機能: FMのキャリアとモジュレーターの関係(8)
- Y字接続(キャリアに対してモジュレーターが並列接続する組み合わせ)
実験
では、音で確認しましょう。
パラメーターの分析は下に書いています。
詳細はそちらをご覧ください。
実験1: 弾いてみる
シーケンサーをONにしてPLAYボタンを押します。
音データ
実験2: モジュレーション・ホイール
偶然だと思いますが、アルペジエーターだけONにして鳴らすと「タッタカタッタカ」というリズムになっていました。
アルペジエーターをONにしてA3を弾きながらモジュレーション・ホイールを0→最大→0に動かす。
音データ
実験3: 片側だけを操作
このプログラムはほぼ同じパラメーター構成で、少しだけ変化させることで表現されています。
なので、OP4~OP6側のパラメーターに変化を与えるとどうなるか、実験してみましょう。
測定方法
OP6のMODEをMODE: WAVE FOLDERに変更して、GAINを上げていきます。
- OP6のMODE: WAVE FOLDERに変更し、OSC MIXを100%、GAINを0%、BIASを0%に設定
- WAVEはSINEを選択
- シーケンサーをONにして、MODE: WAVE FOLDERのGAINを0→100%に上げていく
音データ
GAINの値が小さいところが気持ちの良いところかもしれません。
でもモジュレーターなので、結構過激にしても音の変化は少ないです。
実験4: 片側だけを使う
今度は片側だけ使ってみましょう。
アルペジエーターが「タッタカ」となっていたので、やはりノイズ系の音を作りたくなりました。
測定方法
キャリアのOP4をMODE: MUTEにして、OP1~OP3のみ使用するように設定
OP1のMODE: EFFECTのTYPEをWAVESHAPERに変更
FXをATTACK UPに変更し、OSC MIXを0%、DAMPを0%に設定
OP2のWAVEをNOISE WHITEに変更
MODE: FILTERのOSC MIXを80%に変更
シーケンサーをONにして、MODE: FILTERのRESOを0→100%に変化させる。
音データ
WAVESHAPERやMODE: FILTERを使うことで、
今までと違った音の変化が味わえます。
パラメーター分析
INITプログラムからの変化を元に分析しています。
INITプログラムのパラメーターの設定については「シンセサイザー KORG opsixの機能: INIT(初期設定)プログラムの分析」をご確認ください。
アルゴリズム35が使われています。
Y字接続が2組の構成です。
キャリアにはMODE: EFFECTのCOMB FILTER、モジュレーターの1つにMODE: FILTERが設定され、波形も同じ設定となっています。
モジュレーターのFREQ MODEにはFIXEDが設定されています。
MODE、WAVE、OP LEVEL、FREQUENCY MODE
OP-EG
OP1~OP3、OP4~OP6と同じ設定です。
OP-PITCH、OP-P MOD、OP-L MOD、OP-KEY TRACK
OP-PITCH
OP-PITCHページでは、キャリアのOP1、OP4にDETUNEが設定されています。
OP-P MOD
OP-P MODEページでは、以下のように設定されています。
- モジュレーターのオペレーターにはPITCHの時間的変化を与えるようにEG1 INTが設定され、ベロシティでコントロールするように設定されています。
- OP2にPITCHの周期的変化を与えるようにLFO1 INTが設定され、ベロシティでコントロールするように設定されています。
OP-L MOD
OP-L MODページでは、OP3、OP5、OP6にベロシティが設定されています。
OP-KEY TRACK
OP-KEY TRACKページでは、基準キーC2より高いキーに対してマイナスのレベルとなるように設定されています。
FILTER
FILTERページのパラメーターはINITプログラムと同じ設定値でした。
FILTERはENABLE: ONですが、CUTOFF周波数が最大値であるため、フィルターの影響はないと考えます。
MOD(EG、LFO)
EG
INITプログラムから変更はありませんでした。
EG1はOP-P MODでモジュレーターのオペレーターのピッチに対して時間的変化を与えるように設定されています。
LFO
LFO1は、WAVEがTRIANGLE、KEY SYNCがCOMMON(最初のキーのみ位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがOFF、SPEEDが6.00Hzに設定されています。
LFO1は、OP2にPITCHの周期的変化を与えるよう設定され、ベロシティでコントロールするように設定されています。
また、PROGRAM PITCHでピッチを周期的変化するように設定されています。
LFO2は、WAVEがTRIANGLE、KEY SYNCがCOMMON(最初のキーのみ位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがOFF、SPEEDが2.00Hzに設定されています。
LFO3は、WAVEがSINE、KEY SYNCがCOMMON(最初のキーのみ位相がリセットされる)、TEMPO SYNCがON、TEMPO SPEEDが1/4に設定されています。
LFO3はバーチャル・パッチでアルペジエーターのGATE TIMEの値を変化させるように設定されています。
EFFECT
3つのエフェクトにより、以下の効果を演出しています。
- FX1に設定されたUNISON ENSEMBLEは、音にすっきりした厚みを与えています。
- FX2に設定された3-BAND EQは、中域を上げることによって音のキャラクターを演出しています。
- FX3に設定されたREVERBは、TYPEがHALLに設定され、広めの部屋の残響音を演出しています。
VIRTUAL PATCH
バーチャル・パッチの設定は以下の通りです。
- V.PATCH1は、OP3のピッチの値をモジュレーション・ホイールを動かすことで変化するように設定されています。
- V.PATCH2は、OP2のMODE: FILTERのOSC MIXの値をモジュレーション・ホイールを動かすことで変化するように設定されています。
- V.PATCH3は、OP2のMODE: FILTERのCUTOFFの値をNOTE(鍵盤の位置)によって変化させるように設定されています。
- V.PATCH4は、OP5のMODE: FILTERのCUTOFFの値をNOTE(鍵盤の位置)によって変化させるように設定されています。
- V.PATCH5は、アルペジエーターのGATE TIMEの値をLFO3で変化させるように設定されています。
- V.PATCH6は、プログラムのリリース・タイムをNOTE(鍵盤の位置)によって変化させるように設定されています。
MISC
MISCページ・グループのパラメーターでは、INITプログラムから以下の項目が変更されています。
- LFO1のピッチへの効果としてLFO1 INTが1.50semiに設定されています。
これは、LFO1 CTRL SRCでAftertouchが設定されているので、アフタータッチで効果の強弱を得られるようになっています。
VOICE
UNISON VOICEが2に設定されていて、DETUNEが6 cents、SPREADが30%と効果が軽めに設定されています。
まとめ
今回は「KORG opsixのプリセット分析: 035 Comb Dulcimer」と題して、2つの同じオペレーター構成(Y字接続)を使用したプリセット・プログラム「035 Comb Dulcimer」のパラメーターを分析しました。
オペレーターの構成が2組同じ構成のアルゴリズムをうまく使って音作りをしているプログラムです。
モジュレーター側はFIXEDを使っていますので、キャリアとオペレーターの関係が音作りをする上での参考になりますね。
なぜFIXEDを使っていながらピッチが取れるのかはキャリアのMODE: EFFECT: COMB FILTERによりピッチに連動して出力しているからです。
これを元にベロシティの強弱によって音に変化を与えるとか、少し違った構成にしてみるとか、このプログラムを元に音作りをすると、面白いと思います。
最後の実験は、KAMINが遊んだだけですが(笑)
この記事を読んだ方がシンセサイザーに興味を持っていただけたら幸いです。
次回は「KORG opsixのプリセット分析: 062 FMarimba」と題して、オペレーターの音作りをした後にフィルターを使用したプリセット・プログラム「062 FMarimba」のパラメーターを分析します。
では。
新たな進化を遂げたKORGのFMシンセサイザー、opsixとopsix native。
このシンセサイザーでしか味わえない魅力が満載です。
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